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Kabamyレポート(第二十九回)二〇一八年四月八日(日)
 於かたらいの道・市民スペース(第1会議室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、飯島章友 
 今回のKabamyは「勝手にアンソロジーを企画しよう!」です。参加者それぞれが歌人アンソロジー企画を考えました。なお収録する歌人は100年以内に生まれた歌人に限ります。

 

〇飯島章友
『三十一文字(みそひともじ)のミステリー』  
・「三十一文字のミステリー」とは、本のタイトルであると同時に、あらかじめ与えられた方向性でもあります。「ミステリー」という方向性を与えられたとき、それぞれの短歌は作者の歌意を離れ、恐ろしくも蠱惑的なミステリーへと変わっていくことでしょう。収録歌から皆さんはどのようなミステリーを創出するのでしょうか。わずか三十一文字だからこそ、読者の想像力が活かされるのです。


■春日井建『未青年』
夜行針を壁よりはづせり十四歳の甥の水死の刻(とき)九時五分
■寺山修司『月蝕書簡』
義母義兄義妹義弟があつまりて花野に穴を掘りはじめたり 
■村木道彦『天唇』
マフラーは風になび交うくび長き少女の縊死を誘うほどの赤
■石川美南『離れ島』
なんとまあ重い肉塊 ひきずつて冬の休日診療所まで
■佐藤弓生『モーヴ色のあめふる』
縊死、墜死、溺死、轢死を語りたり夕餉の皿に取り分くるごと
■東直子『青卵』
つぶしたらきゅっとないたあたりから世界は縦に流れはじめる
■浅井和代『春の隣』
いつかふたりになるためのひとりやがてひとりになるためのふたり
■松平盟子『青夜』
梨をむくペティ・ナイフしろし沈黙のちがひたのしく夫(つま)とわれとゐる  
■加藤治郎『サニー・サイド・アップ』
樹をぬらす雨に目覚めて二階から姉の降りてくる気配をにくむ
■佐藤昌『冬の秒針』
うつむいてコピーしているわたくしをだれかがコピーしているような

 

〇高柳蕗子
『大人向けの美麗短歌絵本シリーズ 第一期 十人十色』
・体裁は横長の子供の絵本みたく、見開きで絵と短歌を配置する=30ページ
・イラストレーター3人で5人ずつとか
・コンセプトは鑑賞だが、巻末に解説。多少は年代や個性を比較しテーマを考察。
・「赤」の回を例示


■1919年生まれ杉崎恒夫
目が赤くなるのはC D花粉症モーツァルトはとくにあぶない
■1920年生まれ塚本邦雄
停電の赤き木馬ら死を載せてとまれり われはそれに跨る
■1928年生まれ馬場あき子
赤うをの煮こぼれし目の白玉はさびしくもあるか口にふふみて
■1929年生まれ高瀬一誌
十冊で百五十円也赤川次郎の本が雨につよいことがわかりぬ
■1936年生まれ寺山修司
トラホーム洗ひし水を捨てにゆく真赤な椿咲くところまで
■1941年生まれ高野公彦
文字清き原稿なれば割付【わりつけ】の赤字入れつつ心つつしむ
■1946生まれ河野裕子
目薬は赤い目薬が効くと言ひ椅子より立ちて目薬をさす
■1947年生まれ小池光
坂の上に真ッ赤に夕日がころがりをりのぼりつめたる人の吸はるる
■1950年生まれ山下一路
20箸寮屬ぢヾ錣冒泙傾まれた赤いあたまのボクはポンプだ
■1952生まれ藤原龍一郎
意思表示せぬままいくつ夏越えてさびしやわれのこの赤裸【あかはだか】
■1955生まれ渡辺松男
どの窓もどの窓も紅葉であるときに赤子のわれは抱かれていた
■1956年生まれ小島ゆかり
走り来て赤信号で止まるとき時間だけ先に行つてしまへり
■1958年生まれ坂井修一
夏の花赤(せき)大輪にあらねども散れよと見ればしづかに散れり
■1959年生まれ加藤治郎
少量の粉をふりまく水流に赤きひとひら巻きあがりたり 
■1962年生まれ俵万智
年末の銀座を行けばもとはみな赤ちゃんだった人たちの群れ
■1962生まれ穂村弘
回転灯の赤いひかりを撒き散らし夢みるように転ぶ白バイ
■1963生まれ東直子
「ハ・ル」という唇のまま時を止めふたりは赤きぼんぼりのなか
■1964生まれ佐藤弓生
遊園地行きの電車で運ばれる春のちいさい赤い舌たち
■1968生まれ千葉聡
赤クレーン ウルトラマンの故郷【フルサト】を指【さ】したらスイッチ切られちゃったよ
■1969生まれ吉川宏志
家中に塩が溜まってゆくように赤子は泣けり十月の夜を
■1969生まれ中沢直人
格上の私学で講義する朝の外耳は赤く勃起している
■1970生まれ梅内美華子
古書店に赤き文学全集のさびたるは酸き林檎のような
■1988生まれ千種創一
焦点を赤い塔からゆるめればやがて塔から滲みでた赤

 

〇久真八志
『21世紀のダメ男歌』
・既存の価値観では「男らしくない男」つまり「ダメ男」という烙印を押されかねない男性像をあえて表現している作者たちを集め、実際には多様である男性像を提示することで、「男らしさ」とは何かを考え直す新しい視点を読者に提供したい。


■吉川宏志
へらへらと父になりたり砂利道の月見草から蛾が飛びたちぬ
■山田航
たぶん親の収入超せない僕たちがペットボトルを補充してゆく
■奥田亡羊
たまにしか会えない父は遠く来て子の玉入れの入らぬを見つ
■法橋ひらく
冬がくる 空はフィルムのつめたさで誰の敵にもなれずに僕は
■光森裕樹
母の名に〈児〉を足し仮の名となせる吾子の診療カードを仕舞ふ
■しんくわ
はっきりもっと鈍感になって近年の猪木のように年を取りたし
■吉田隼人
いくたびか掴みし乳房うづもるるほど投げ入れよしらぎくのはな
■永井祐
ミケネコがわたしに向けてファイティングポーズを取った殺しちまうか
■吉岡太朗
わしのした便のほのかなぬくもりがいつかは衆生(たみ)を救ふんやろうか
■江田浩司
少しずつ毒を混ぜたり出来る地位主夫というのは楽しかるらん


(記/久真八志)
 

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