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Kabamyレポート(第二十七回)二〇一七年十二月十七日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1会議室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、飯島章友、沢茱萸、HARUKA、木村友、田中有芽子、中成 (ゲスト)高村七子

 

今回は「音」がテーマです。前半は参加者が持ち寄った「音がいい」と思う短歌を分析し、そう思わせる要素について考察します。後半は実際に「音がいい」短歌を作って歌会を行いました。

 

〈前半〉「音がいい」短歌はなぜ音がいいのか考えよう
(1)チーム分けし、話し手と聞き手と書記を決める。役割はローテーションする。話し手は「音がいい」と思うのはなぜかを話す。書記は「音がいい」を構成する要素としてあがったものを書き留める。聞き手は話し手の話を掘り下げて、要素を聞き出す
(2)書き留めた複数の要素をまとめ、音のよさを決める重要度順にランキングを作成する。
(3)各チームでランキングを発表

 

〇各参加者が持ち寄った「音がいい」と思う短歌
・HARUKA選
 こころねを ととのえてゆく ことのはの さやかゆれつつ ことたまをきく HARUKA
・高柳蕗子選
体液の虹の濃度を勝ちほこり ぼくは四郎砲声デザイナー  高柳蕗子
・沢茱萸選
 多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだかなしき  万葉集 巻14・3373 東歌 作者未詳
・飯島章友選
 ひかれあう力は痛い 翌朝のひのきのふたのほのかなしめり 東直子『春原さんのリコーダー』
・久真八志選
 口論にすっきりと勝つ空想が酢につけた蓮の根を白くする  温井ねむ
・中成選 
 君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ  北原白秋
・高村七子選
 夢を見る戦火の中をふたりして走るとなりで君が倒れる  松野志保
・木村友選
 雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ 小池光『バルサの翼』
・田中有芽子選
 ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平・百人一首

 

《Webアンケートより》
・暴動羨しけれ わがむねに昏昏と僧帽瓣の紅き僧帽  塚本邦雄
(コメント)近代音楽的な変拍子・転調・多重的な意味・律動の戯れに圧倒された。
・氷(こほり)ゐるみるめなぎさのたぐひかはうへおく袖のしたのささ浪 藤原定家(六百番歌合)
・熟田津(にぎたづ)に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな 額田王(万葉集)
・わが胸にぶつかりざまにJe(ジュ)とないた蝉はだれかのたましいかしら 杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
・喜悦したきんきん声で麒麟までも跪拝し曰く「君が嫌いだ」 高柳蕗子『あたしごっこ』
・白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう  斎藤史
・けふもまた冷たいドアを鎖すとき鉄より鉄をぬきさりし音 木下こう『体温と雨』

 

〇チームごとにランキング発表
・HARUKA、中チーム
1.同じ母音、子音の多用
2.単調ではないアクセントがある
3.柔らかい言葉が多い
4.オノマトペ
5.連続的な音が多い 

 

・高柳、飯島、木村チーム
1.五十音の行ごとの特徴を生かす
2.ありがちなメロディーからの脱却
3.間を生かす

 

・久真、沢、田中チーム
1.口をあまり動かさない(母音の連続、くちびるがくっつかない)
2.着地点がそろう(同じ子音が同じ位置)
3.音と調和したモチーフ
4.子音は互い違いで母音は連続
5.流れるような感じ(変化があって元に戻る)

 

〈後半〉「音がいい」短歌を作ってみよう歌会
(1)「野菜の名前」だけを使って短歌を作る。助詞や助動詞を一切使わないこと。同じ単語は二回まで使用可。
(2)一人二点持ち、無記名にて投票

 

〇結果
()内は得点、※は他の参加者からのコメント

・高柳蕗子
(2)トマトミニトマト唐がらしぴいまん 水菜みぶなめキャベツわさび菜
※破調かと思いきや五七五七七は守っている。「唐がら・しぴいまん」となるのが面白い。


・中成
(0)サツマイモトマトアボカドトウモロコシシメジブロッコリーズッキーニ
※「シメジブロッコ」からの下句のリズムがいいが、三句目「トウモロコシ」が字余りのわりに効いていない。s音も言いにくさがある。


・田中有芽子
(3)コールラビルッコラケールズッキーニペピーノフルーツトマトゴマウド
※長音と促音の多用で弛緩と緊張が繰り返されリズムが良い。最後のゴマウドは賛否両論。


・HARUKA
(4)ねぎわけぎあおねぎこねぎくじょうねぎねぶかしもにたねぎふかやねぎ
※下句のノリがよく、音がきれい。「ねぎ」で口を閉じるが、「か」「た」「かや」でア音がくるので花が開くような爽快感がある。


・高村七子
(3)セリセロリパセリシロウリブロッコリ キュウリニガウリマクワウリセリ
※濁音と半濁音が効果的。五七五七七にはまっていてきれい。もうすこし崩しも必要では?


・久真八志
(1)ゴママッシュルームタロイモサツマイモ サトイモソラマメタカナナタマメ
※「ゴママッシュ」が面白い。下句のまとまりがいい。m音は言いにくい。


・飯島章友
(2)アカカブライチゴダイコンウドスズナエリンギユリネオクラレンコン
※「イチゴダイコン」は「いちご大福」、「ウドスズナ」は「ウド鈴木」など既存の単語に似た響きでつなげたところにしっくり来る感じが強い。アイウエオで折句をしている。


・木村友
(1)トマトカブ春菊しめじキュウリウリケール松茸なすさつまいも
※下句のリズムがきれいに感じる。「まつ」「なす」「さつ」で畳みかけるように韻を踏んでいる。


・沢茱萸
(2)パセリセリパクチーちぢみホウレンソウアーティチョークズッキーニアズキ
※「アーティチョークズ・ッキーニアズキ」という下句の展開が気持ちよくないリズムだが、不思議に印象的である。

 

〈会場意見〉
・これまでは音のいい短歌についてリフレインなどに着目しているだけだったが視野が広がった。
・音に着目して読むのは初めてなのでどうコメントしてよいかわからなかった。
・珍しい企画。ここまで徹底して音にこだわる機会はない。
・似たような仕上がりの短歌が出てくると思っていたが、いずれも個性的だった。
・きれいにまとめるより、自然なリズムで面白いと感じる部分がある方が印象に残りやすいのではと思った。
・メロディー(音の高い低いのつらなり)という視点が発見だった。


(記/久真八志)
 

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