Kabamyレポート(第二十二回)二〇一七年二月十二日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1教室)

【参加者】飯島章友、高柳蕗子、久真八志、杉田菜子、藤島優美 
(ゲスト)中成

 

今回のKabamyは「歌集を読む」形式の勉強会(※)の新しいやり方を開発するというテーマで行いました。
※歌集を一冊取り上げ、その考察を行う形式。一人以上のリポーターによる基調発表、パネルディスカッション、参加者による数首選などいくつかバリエーションがある。歌集の批評会なども含む。

 

[1]オープニング
・参加者の自己紹介 

 

[2]これまでの「歌集を読む」勉強会の問題を探ろう
・事前に参加者および非参加ながら協力いただいた方へのアンケートを行っており、その回答をもう一度検討する。
アンケートの設問は「歌集を読む勉強会に出て期待外れだった経験はなにか?」
・回答内容の要点をホワイトボードに書きつつ、「回答者が勉強会に最も期待していたことは何か」を深堀りする。
(主な回答例)
・「忌憚なく厳しいご意見を」と司会者が言うが、「忌憚なく言えない」という根本問題を改善する工夫をせず口先だけで「忌憚なく」と言う程度の問題意識である。また忌憚なく言うのが「厳しいご意見」では「ほめるかけなすか」という次元のジレンマを克服できない。
・リポーターと他の参加者の質疑応答があったが、互いに重視しているポイントが異なり、論点がずれたまま意見が対立する状況が生まれ、場の空気が悪くなってしまった。
・規定のリポート発表時間をオーバーして長引いてしまう。そのあとのディスカッションの時間がなくなる。また時間を守れない発表者はたいていの場合、自分の言いたいことが定まっていない。だから自分の発見したいくつかのことの、ほとんど全て言及しようという構えで、結果的に論点が散漫になってしまう。
・作者の立ち位置とか、思想が問われる場面があったのに、沖縄から来られた年長者(福島の時も)なので、突っ込めない。現場性とか、作者の切実さと、作品の成立とがごちゃ混ぜのまま話される。作品の読み方が問われないと面白くないのだが、当人と対面してだと、かなり際どい話になる。
・作者が仲良しでその友人をただ持ち上げているときは聞いていても新しい発見がなくつまらないと感じる。
・複数のパネリストの意見がけっこう食い違っていたが、それぞれ「私はこう思います」で終わってしまった。司会が議論を促したが、うまく発展しなかた。

 

[3]「今まで勉強会でできていなかったこと」は何か?
・「期待外れだったこと」は「今までの勉強会でできていなかったこと、つまり期待されていたが提供できていなかった価値」である。
・「今まで勉強会でできていなかったこと」のうち、似た意見を集約する
・全員で、特に解決すべき重要な問題を合議で決定する。今回は3つの問題を設定した。
問題A「歌集の新しい見方を成果として提示できない」
問題B「作家(歌人)を論じてしまう」
問題C「相容れない立場の人と話ができない」

 

 

[4]「今まで勉強会でできていなかったこと」を解決するアイデアをたくさん出そう
・2人ずつのチームに分かれ、[3]で解決すべきと決めた「今まで勉強会でできなかったこと」を割り当てる
A解決チーム 飯島、中
B解決チーム 久真、杉田
C解決チーム 高柳、藤島
・各チームはその解決策のアイデアを出す。まずはとにかくたくさんアイデアを出すことを目指す。目標は20個。
※解決策は勉強会のテーマの設定条件や進行のルールなど、イベントを進行させる枠組み(フォーマット)であることとする。個人の力量に依存しないで済むことを念頭に置く。
・各チームは思いついたアイデアを大き目の付箋に書きとめ、模造紙に貼るなどして発想を広げていく

 

[5]もっとも効果的な解決策を考えよう
・各チームは[4]で出た解決策のうち、もっとも効果的なアイデアはどれかを議論し、最終的に提案する一案を絞る。その案に沿った企画書を作る
 企画書の形式:「歌集を読む」形式の勉強会のフォーマット・タイトル・コンセプトを書く

 

[6]コンペ【プレゼン&質疑応答】
・各チームの企画書をホワイトボードに貼り出し、『これからの「歌集を読む」勉強会はこれ!』というテーマの発表を行う。持ち時間は3分。
・プレゼン後、参加者全員で講評。

 

Aチーム
 タイトル:少数精鋭による長期戦
 コンセプト:歌集の新しい見方を成果として提示できない、を解決する
 フォーマット:個人個人が辞書、ネット、書評を活用し予習してくる。少人数(なるべく部外者を含む)のグループ分けをし、発表し合う。勉強会を終えてから時間をおき、もう一回同じテーマ(歌集の新しい見方)で勉強会を行う。
 ねらい:まず既にある歌集評を集め、インプットする。少人数にするのは互いに顔が見える距離を維持し、気軽にしかし集中を維持しながら議論の質を高める効果を狙う。なるべく短歌以外の造詣のある参加者を加えることで多角的な意見を取り入れる。短時間では有効な意見が出ないこともあるので、一度勉強会をしたあと、ある程度の期間を置いてもう一度勉強会を行う。

 

Bチーム
 タイトル:凸凹コンビで読もう!
 コンセプト:作家(歌人)を論じてしまう、を解決する
 フォーマット:リポーターは二人の作者の歌集を比較する。二人の作者は属性(出身地、生年、職業、性別等)に共通でない点があること。二つの歌集はモチーフ・修辞・文体などで似ている要素があること。発表者は属性の違いに関する何らかのデータ(統計、史実)を出すこと。
 ねらい:作者個人の事情ではなく、環境というもう少し拡げた枠組みで作品の背景を捉える。そのために二人の何らかの属性の異なる作者の歌集を選び、その属性にフォーカスして論じる。客観性のある資料を用意することで焦点を明確に、かつ共有しやすくする。歌集はまったくかけ離れたものではなく一見似ていると感じられるものを選定する。

 

Cチーム
 タイトル:この指とまる??
 コンセプト:相容れない立場の人と話ができない、を解決する
 フォーマット:読む人の立場で見解が異なりそうな歌集を取り扱う場合に適用。作者自身に「作者がこだわって発信したいこと」を先行して調査する。調査をもとに読者アンケートを実施する。アンケートでは回答者情報の他、作者の見解や立場に対して賛同・中庸・反対・無関心など共鳴の度合いを訊きつつ、好きな歌を選歌してもらう(例えば二〇首など)。パネリストはこのアンケート結果(共鳴の度合いごとに現われる選歌傾向の違い)を考察の対象にする。傾向に違いがあるならば背景は何か、まんべんなく選ばれる歌があるならばどこに良さがあるか。
 ねらい:歌の技法だけに焦点をあてると、むしろ作者のこだわりや発信したいことを軽視してしまう恐れがある。そこで共通の基盤を得る、客観性をもたせる、作者の意図の尊重の三点を重視したい。そのためまず作者の見解を明確にする。次にあえて作者を含む関係者の立場の違いと選歌傾向を調べて客観性のあるデータに変換することで、参加者間の分断があることを共通認識として得られる。パネリストはその状況を考察することで、各人の立場を尊重しつつ考察が可能となる。

 

【参加者の感想】
・面白かったこととしては、自分の経験について発言し、皆で話し合ったことで、勉強会では新しい見方を見出すといった、今後の目的意識などを確認できたり、実際に勉強会の新しい方法を発想できたと思えることです。
・人が集まって意見交換をする場を有意義にするためには、共通の地盤から出発できるよう「場」を設計する工夫が必要だとわかった。
・勉強会の内容そのものについて話し合うことで、計画も立てやすくなって良かったのではと思います。また「こういうことがあって困った」話が「あるあるネタ」的に共有されていくのが面白かったです。

 

(記/久真八志)
 

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