Kabamyレポート(第十九回)二〇一六年八月二一日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1教室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、山下一路、飯島章友、河野瑶、斎藤見咲子、吉川満、田村聖也、前田宏、東直子、佐々木遥 (ゲスト)温井ねむ、詩穂、原田彩加、有原汐、市岡和恵[質問のみ](購読会員)足田久夢[質問のみ]


今回の Kabamyは「みんなで答える!読みのお悩み相談室(東直子編)」です。読みで壁に当たっている部分を他の人に相談して、考えてもらうという企画です。今回は東直子さんの歌を取り扱いました。。

 

〈進行〉
(1) 指名  質問人以外の役割分担を決めます。 
(2) 質問【5分】 質問人が歌と質問を提示します。
(3) 討論【15分】 回答人は回答案や回答につながるような意見を発表します。回答人は、まとめ人に自分の回答案を採用してもらえるように最大限のアピールをします。
(4) 回答【5分】 まとめ人が討論の内容を踏まえ回答をまとめて、発表します。回答は「答え+理由」を二文で述べる形式にします。

 

〈役割分担〉 
質問人(1名) 歌と、歌に対する質問を提出する役。
回答人(複数名) 質問に対する回答を考えて提案する役。まとめ人に自分の回答案を採用してもらえるように最大限努めること。他の回答人の答えに対する部分的な賛同、反論は自由にしてよい(全面的な賛同はなし、ちょい足しはあり)
まとめ人(1名)  回答人たちの回答案から、最終的に一つの回答をまとめる役。一つの回答を選択する、または複数の回答案を集約して回答をまとめること。自分の意見を反映させず、最も説得力のあった意見を採用する。
司会(1名) 進行の各ステップへの切り替えを行い、また討論中の発言者を決める役。

 

〈質問および回答結果〉
(ア)ママンあれはぼくの鳥だねママンママンぼくの落とした砂じゃないよね 「青卵」
[Q]ママンは生きているのでしょうか? (久真八志)
[A]生きていません。なぜなら、この歌には尋常でない切実さがあり(執拗な念押し、確認)、ぼくは普通ではない精神状態である。よって、ぼくは見間違えるほど遠くにある鳥と砂をみながら、もはや隣にいないママンによびかけているのだ。(まとめ人:温井、回答人:詩穂、有原、吉川、原田、司会:久真)

 

(イ)ふくらはぎの形について考える例えばミルクこぼした朝も 「春原さんのリコーダー」
[Q]なぜミルクなのでしょう? 例えばコーヒーや紅茶ではそぐわないのでしょうか。(足田久夢)
[A]ミルクは、コーヒーや紅茶と違い、動物から取るため、肉体的なイメージを伴っており、「ふくらはぎ」のたぷんとして白いイメージとも共通する。また、ミルクには幼さや幼少期を懐かしむイメージがあり、「考える」という思いをはせる行為を連想させる。これらが、この歌で「ミルク」が使われている理由である。(まとめ人:田村、回答人:久真、詩穂、有原、吉川、原田、司会:東)

 

(ウ)消したいと思ったこともあったけど「なめらかプリン」分け合っている 「十階」
[Q]誰が誰を消したいと思ったのでしょうか? (市岡和恵)
[A]上の句で過去に「消したい」と思ったこともあるが、下の句で今はプリンを分け合って折りあっているという文脈は夫婦や恋人の関係性におけるステレオタイプ。しかし「消したい」は強い言葉であり、卑近な夫婦や恋人なども全て含めた「世界」そのものと考えるのが妥当だろう。(まとめ人:飯島、回答人:高柳、山下、斎藤、佐々木、河野、前田、司会:温井)

 

(エ)写真だけ残してこの森(くに)に死ぬ三万人のねがいのために 「こんなところにポピーが咲いて」(短歌ヴァーサス4号)
[Q]この「三万人」はどんな人たちなのでしょうか? (詩穂) 
[A]不本意な形で外国の地で亡くなった人たちです。「三万人」の議論の前に…「死ぬ」の後で切れるのか否か議論になったが、一字空けがないのでつなげた方が妥当であると確認した。つなげて読むと「写真だけ残してこの森に死ぬ」三万人への追悼、鎮魂の気持ちを感じる。「この森(くに)」から外国らしい感じがある。(まとめ人:佐々木、回答人:高柳、温井、田村、原田、司会:山下)

 

(オ)青空の被膜を破り落ちてくる うまれることをおそれたひかり 「うた新聞」2016年7月号
[Q]落ちるのは「ひかり」の決意によるものでしょうか? それともやむなくそうなってしまったのでしょうか? (有原汐)
[A]決意によるものです。「ひかり」が物質そのものを指すのであればものに意志はないの決意はないと考えられます。しかし、「破り」「おそれた」という言葉にはひりの意志のようなものが感じられます。「破り」というのは能動的であり、「おそれた」というのは感情なので(「落ちてくる」は受動的ですが)、歌のつくりとしてはひりの擬人化であると考えられるため、決意によるものだと判断しました。(まとめ人:斎藤、回答人:久真、前田、飯島、吉川、司会:河野)

 

(カ)好きになるという粘土質歩くとき私に神がいないさびしさ 「春原さんのリコーダー」
[Q]もし神がいたら、「私」に何をもたらしてくれるのでしょうか? (田村聖也)
[A]確かな足場です。粘土を溶かしてくれる気持ちそのものと言えます。自分の思いに縛られている状態をなんとかしてくれ、さびしさが取り除かれます。(まとめ人:原田、回答人:温井、有原、前田、河野、司会:高柳)

 

(キ)ずっと一緒にいられなくても覚えてる川が黒くて、それをみたこと 「かばん」2015年5月号裏表紙
[Q]「、」はあった方が良いのでしょうか? (斎藤見咲子)
[A]良いです。読点は「川が黒かったこと」と「それを一緒に見たこと」の二つの事実を強調します。一緒に見たことは、一緒に居る誰かとの関係性を主体が大切に思っていることを示し、「川が黒かったこと」はその印象的な光景故にいつまでも覚えていることを担保する二人にとっての共有財産として機能しています。(まとめ人:久真、回答人:吉川、佐々木、飯島、山下、司会:詩穂)

 

(記/久真八志)

 

☆配布資料を以下のリンクに掲載しています。

[配布資料リンク]

 

☆全質問への回答をホワイトボードに書いた結果(クリックして大きな画像が開きます)


 

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