Kabamy24のお知らせです。

 

【参加資格】
・会員、購読会員のどなたでも参加できます。事前連絡なしで当日飛び入りの参加も歓迎です。
・非会員で参加を希望される方は事前の連絡が必要です。
連絡先:kabamy@kaban-tanka.jp(Kabamy専用アドレス)
終了後に二次会(喫茶店)があります。二次会に参加されない方は申し込みの際あわせてお伝えください。

 

【日時】
日時:6/18(日) 14時-17時
場所:あんさんぶる荻窪 第1教室(3階) ※最寄:JR荻窪駅
地図:http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/katsudo/ensemble/1018713.html
会費:300円

 

【企画】
論点を探そう!評から読みとく斉藤斎藤「人の道、死ぬと町」前半戦

 

【内容】
2月に実施した関心のある歌集アンケート同率一位の斉藤斎藤「人の道、死ぬと町」を取り上げます。
といっても一筋縄ではいかないこの歌集、どこから話を始めたらよいのやら。
そこで作品そのものと睨めっこするのではなく、たたき台になる評を決めて、それを基に作品について何らかの結論を出していこうと思います。
またKabamy22で考案した長期戦システムを採用し、今回と8月の二回にわたって行うという初の試みとなります。前半戦は既存の評をもとに一度結論を出し、後半戦では一度出した結論をもっと深く検討していきます。
いろいろ書きましたが、難しいことも参加者全員の知恵を絞って解決していけるように工夫を凝らしてやるつもりですので、興味のある方はぜひ気軽にお越しください。

 

【進め方】
前半戦となる今回は以下のようなことを行います。全てワークショップの流れのなかで行いますし、チームを組んで行いますので、難しそうだなあと構えなくても大丈夫です。
・既存の複数の評論から重要な論点はどれかを検討する
・最も重要な論点を扱っている評論を選び、反論を考えて、新しい主張を考える
※内容は変更される場合があります。
なお後半戦は前半戦で一旦出た結論をさらに深く検討していきます。お楽しみに。

 

【事前課題・準備資料について】
事前に「人の道、死ぬと町」または収録作品に対する評論をいくつかピックアップしますので、それを読んできていただきます。
また、その中で「主張に納得できるかはともかく、重要な論点を扱っている」ものを一本選んできてもらいます。
資料の準備は不要です。

 

【注記】
前半戦、後半戦いずれかの参加でも問題ありません。

参加に当たって該当歌集の購入は必須ではありません。
 

【募集】
次回のKabamyの教材に使うため、斉藤斎藤「人の道、死ぬと町」に対して、または収録作品に対して過去に発表された評論を探しています。あなたが「これは読んでおいた方がいい」と思うものを教えてください。お手数ですが評論の出典(掲載誌、執筆者)を添えてください。よろしくお願いします。

連絡先:kabamy@kaban-tanka.jp

締切:5月末

 

 

担当/久真八志

Kabamyレポート(第二十二回)二〇一七年四月十六日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1教室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、藤島優美、吉川満、白糸雅樹、木村友 


 今回のKabamyは「天使・噴水・飛行船 杉崎恒夫と井辻朱美比べ読み!」です。杉崎恒夫さんと井辻朱美さんの作品を読み比べて、二人の作風の違いを考えてみようという企画です。

 

(1)イントロダクション 
作者名を隠して井辻、杉崎、その他の作者の短歌を見せ、作者名を当てはめるクイズをしました。


・天使
佐藤弓生(A)これもまた天使 くまなくひらかれてこころをもたぬ牛乳パック
井辻朱美(B)甘藍を抱ける天使 生きるとは夢でなければ夢になるべし
杉崎恒夫(C)クリオネは氷のいろに透きとおり天使もどきに疲れてしまう


・噴水
井辻朱美(A)たてがみをひらけ椰子の木(アルハンブラにたったひとつの噴水のように)
杉崎恒夫(B)夏休みもおわりとなれり噴水は配水管のなかの休日
東直子(C)噴水のような約束十時ごろ雲公園にわらわらと人


・飛行船
杉崎恒夫(A)飛行船そなたを旅へかりたてるラグビーボールほどのたましい
光森裕樹(B)ビル背面をゆきてふたたび出て来ざるツェッペリン忌の飛行船かな
井辻朱美(C)銀の尻の象のごとくに浮かびいる飛行船など 秋の教室

 

正解率は半分ぐらい。意外に判定は難しいようです。ただし、同じキーワードを使った歌でもなんとなく扱い方、キーワードの醸し出す雰囲気が異なることがわかりました。

 

 

(2)進行の説明
・「作風」の一要素として、あるキーワードをどのように扱うか、を今回は考える
・「天使」「噴水」「飛行船」は杉崎さんと井辻さんが共通で他の作者よりも高い頻度で使うキーワードであることがわかった。
【闇鍋調べ】
「天使」率 全体:0.17%   杉崎:1.72%  井辻:1.03% 
「噴水」率 全体:0.13%   杉崎:1.41%  井辻:1.45%
「飛行船」率 全体:0.05%   杉崎:0.94%  井辻:0.72%
※母数……全体:63423首 杉崎:639首 井辻:1170首

 

(3)キーワードマップを作ろう
・3つのチームを作り、各キーワードを割り当てる
「天使」チーム:吉川、木村
「噴水」チーム:高柳、藤島
「飛行船」チーム:白糸、久真


・各チームは、割り当てたキーワードから連想する物事を自由にたくさん挙げる
大き目の付箋に書いて、模造紙に次々貼っていきます。インターネットなどで調べてもOK。連想された単語の一例は以下の通り。
天使……翼、性別不承、ラッパ、審判、救い、西洋
噴水……生命力、形をもつ、技術、公園、涼しい、石像
飛行船……冒険、爆発、広告、大きい、空、レトロ


・印象(雰囲気、感じ)の近いものをグループ化する。グループの目安は5ケ前後。
付箋をグループごとに貼り直してまとめていきます。
・各グループの「トーン」を一言二言で表して、分類する。
グループに見出しをつける作業です。各キーワードは以下のトーンに分類されました。


天使……光と愛情(光のような明るい愛情)、嬰児性と不老不死(永遠にこども)、翼、音楽、天国、宗教

K23-3


噴水……生きてるみたい、生命力、おどろき、西洋・反自然、娯楽(楽園)、人工

K23-1
飛行船……楽しい、あやうい、目立つ、大きい、ふわり、レトロ

K23-2

 

(4)作品をあてはめてみよう
各チームに割り当てキーワードを使った杉崎・井辻両作者の作品を書いた短冊を配布(各作者8枚程度)。歌の短冊を、作品がさきほど作ったトーングループのうち近いものに置いていき、テープで貼る。

 

(5)作者の特徴をずばり言おう
これまでの結果をもとに、「井辻作品の【キーワード】のトーンは〇〇、杉崎作品の【キーワード】のトーンは〇〇。なお二人とも〇〇なトーンからは遠い」という内容をまとめる。それぞれ代表的な一首をそえる。以下は代表的な一首ととともに、近い分類がされた歌を掲載。

 

・天使
杉崎恒夫作品のトーンは「翼を持て余している」
例歌:ぼろぼろの大き翼をもつ天使骨董屋のいうままに立ちおり
天使にはなり得なかったひと夏のかいがら骨の羽の痕跡
鶏小舎に飼われていたのはマルケスのぼろぼろ天使二月ふる雨
井辻朱美作品のトーンは「雌雄なき嬰児性」
例歌:アラビアの月の弧をなす眉というを思えり天使に雌雄なければ
純白のシクラメン立つ冬の隅 天使が鼻をかみすてたあと
こな雪のつつむ足もと太虚よりきりなく降る天使の喃語
どちらの作者とも遠いトーンは「愛情」

 

・噴水
杉崎恒夫作品のトーンは「身体をもつ生き物感」
例歌:噴水のシンクロナイズドスイミングたくさんの脚の立つ時のある
捩れつつ立ち直りつつ噴水を支えいるのは水の軟骨
噴水の立ち上がりざまに見えているあれは噴水のくるぶしです
井辻朱美作品のトーンは「勇ましいパワー」
ひとりではささえきれない碧空のため世界に無数の噴水あがる
数条の不滅のたましい噴水のたちあがるところ楽園となる
根源のなつかしさから立ち上がる巨神兵いな噴水の列
どちらの作者とも遠いトーンは「突然性/観光」

 

・飛行船
杉崎恒夫作品のトーンは「冒険への憧れと不安」
例歌:飛行船そなたを旅へかりたてるラグビーボールほどのたましい
こんなにも明るい秋の飛行船ひとつぶの死が遠ざかりゆく
飛行船が浮いている街 地下道をでてから方位狂いはじめる
井辻朱美作品のトーンは「壮大なもののはるけさ」
例歌:万象のそよぐ地上よりはるかにて飛行船とう無秩序の澄む
愛というこの世の温度ぬぐわれて天青【てんせい】の涯【はて】をゆく飛行船
かずかずのはるかさに生きるものたちよ 椰子の木 雨 そして飛行船
どちらの作者とも遠いトーンは「目立つ」

 

(6)発表
チームごとに結果を発表し、解説する。作者ごとに、キーワードとそのトーンの関係をより抽象化して「作者の言葉の扱い方」をまとめる。ここではまとめ時に出てきた意見を掲載します。
・杉崎さんの「天使」は人間に近く、井辻さんの「天使」は人間とは程遠い存在のように感じる。
・杉崎さんの「噴水」に感じる身体は、足に関連する単語も多く、二足歩行しそう。これも人間に近い。井辻さんの「噴水」に感じるパワーは、世界規模の楽園を支えるような、非常に大きなパワー。
・杉崎さんの「飛行船」は不安というネガティブなイメージは薄いのではないか。死がにおわされてはいるが、死はむしろ身体かの解放程度のイメージで、ポジティブでもネガティブでもなくニュートラルな雰囲気がある。

 

・以上より、杉崎さんと井辻さんの作風の違いを次のように結論付けた。
杉崎作品では、人間的な身体への意識が強く、かつその身体をなくした別の存在(たましいなど。人間ではないもの)が詠われる。井辻作品でも、人間を超越したものが詠われる。このとき、井辻作品では人間と人間ではないものとの間に階層があり、人間には到達できないその絶対的な断絶、距離感が作品の基底にある。一方で、杉崎作品での人間と人間でないもののあいだには階層がなく、地続きであり、容易に転換し得るように感じられる。両者を親和的に、等価的に描くのが杉崎作品の特徴である。


(記/久真八志)
 

Kabamyレポート(第二十二回)二〇一七年二月十二日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1教室)

【参加者】飯島章友、高柳蕗子、久真八志、杉田菜子、藤島優美 
(ゲスト)中成

 

今回のKabamyは「歌集を読む」形式の勉強会(※)の新しいやり方を開発するというテーマで行いました。
※歌集を一冊取り上げ、その考察を行う形式。一人以上のリポーターによる基調発表、パネルディスカッション、参加者による数首選などいくつかバリエーションがある。歌集の批評会なども含む。

 

[1]オープニング
・参加者の自己紹介 

 

[2]これまでの「歌集を読む」勉強会の問題を探ろう
・事前に参加者および非参加ながら協力いただいた方へのアンケートを行っており、その回答をもう一度検討する。
アンケートの設問は「歌集を読む勉強会に出て期待外れだった経験はなにか?」
・回答内容の要点をホワイトボードに書きつつ、「回答者が勉強会に最も期待していたことは何か」を深堀りする。
(主な回答例)
・「忌憚なく厳しいご意見を」と司会者が言うが、「忌憚なく言えない」という根本問題を改善する工夫をせず口先だけで「忌憚なく」と言う程度の問題意識である。また忌憚なく言うのが「厳しいご意見」では「ほめるかけなすか」という次元のジレンマを克服できない。
・リポーターと他の参加者の質疑応答があったが、互いに重視しているポイントが異なり、論点がずれたまま意見が対立する状況が生まれ、場の空気が悪くなってしまった。
・規定のリポート発表時間をオーバーして長引いてしまう。そのあとのディスカッションの時間がなくなる。また時間を守れない発表者はたいていの場合、自分の言いたいことが定まっていない。だから自分の発見したいくつかのことの、ほとんど全て言及しようという構えで、結果的に論点が散漫になってしまう。
・作者の立ち位置とか、思想が問われる場面があったのに、沖縄から来られた年長者(福島の時も)なので、突っ込めない。現場性とか、作者の切実さと、作品の成立とがごちゃ混ぜのまま話される。作品の読み方が問われないと面白くないのだが、当人と対面してだと、かなり際どい話になる。
・作者が仲良しでその友人をただ持ち上げているときは聞いていても新しい発見がなくつまらないと感じる。
・複数のパネリストの意見がけっこう食い違っていたが、それぞれ「私はこう思います」で終わってしまった。司会が議論を促したが、うまく発展しなかた。

 

[3]「今まで勉強会でできていなかったこと」は何か?
・「期待外れだったこと」は「今までの勉強会でできていなかったこと、つまり期待されていたが提供できていなかった価値」である。
・「今まで勉強会でできていなかったこと」のうち、似た意見を集約する
・全員で、特に解決すべき重要な問題を合議で決定する。今回は3つの問題を設定した。
問題A「歌集の新しい見方を成果として提示できない」
問題B「作家(歌人)を論じてしまう」
問題C「相容れない立場の人と話ができない」

 

 

[4]「今まで勉強会でできていなかったこと」を解決するアイデアをたくさん出そう
・2人ずつのチームに分かれ、[3]で解決すべきと決めた「今まで勉強会でできなかったこと」を割り当てる
A解決チーム 飯島、中
B解決チーム 久真、杉田
C解決チーム 高柳、藤島
・各チームはその解決策のアイデアを出す。まずはとにかくたくさんアイデアを出すことを目指す。目標は20個。
※解決策は勉強会のテーマの設定条件や進行のルールなど、イベントを進行させる枠組み(フォーマット)であることとする。個人の力量に依存しないで済むことを念頭に置く。
・各チームは思いついたアイデアを大き目の付箋に書きとめ、模造紙に貼るなどして発想を広げていく

 

[5]もっとも効果的な解決策を考えよう
・各チームは[4]で出た解決策のうち、もっとも効果的なアイデアはどれかを議論し、最終的に提案する一案を絞る。その案に沿った企画書を作る
 企画書の形式:「歌集を読む」形式の勉強会のフォーマット・タイトル・コンセプトを書く

 

[6]コンペ【プレゼン&質疑応答】
・各チームの企画書をホワイトボードに貼り出し、『これからの「歌集を読む」勉強会はこれ!』というテーマの発表を行う。持ち時間は3分。
・プレゼン後、参加者全員で講評。

 

Aチーム
 タイトル:少数精鋭による長期戦
 コンセプト:歌集の新しい見方を成果として提示できない、を解決する
 フォーマット:個人個人が辞書、ネット、書評を活用し予習してくる。少人数(なるべく部外者を含む)のグループ分けをし、発表し合う。勉強会を終えてから時間をおき、もう一回同じテーマ(歌集の新しい見方)で勉強会を行う。
 ねらい:まず既にある歌集評を集め、インプットする。少人数にするのは互いに顔が見える距離を維持し、気軽にしかし集中を維持しながら議論の質を高める効果を狙う。なるべく短歌以外の造詣のある参加者を加えることで多角的な意見を取り入れる。短時間では有効な意見が出ないこともあるので、一度勉強会をしたあと、ある程度の期間を置いてもう一度勉強会を行う。

 

Bチーム
 タイトル:凸凹コンビで読もう!
 コンセプト:作家(歌人)を論じてしまう、を解決する
 フォーマット:リポーターは二人の作者の歌集を比較する。二人の作者は属性(出身地、生年、職業、性別等)に共通でない点があること。二つの歌集はモチーフ・修辞・文体などで似ている要素があること。発表者は属性の違いに関する何らかのデータ(統計、史実)を出すこと。
 ねらい:作者個人の事情ではなく、環境というもう少し拡げた枠組みで作品の背景を捉える。そのために二人の何らかの属性の異なる作者の歌集を選び、その属性にフォーカスして論じる。客観性のある資料を用意することで焦点を明確に、かつ共有しやすくする。歌集はまったくかけ離れたものではなく一見似ていると感じられるものを選定する。

 

Cチーム
 タイトル:この指とまる??
 コンセプト:相容れない立場の人と話ができない、を解決する
 フォーマット:読む人の立場で見解が異なりそうな歌集を取り扱う場合に適用。作者自身に「作者がこだわって発信したいこと」を先行して調査する。調査をもとに読者アンケートを実施する。アンケートでは回答者情報の他、作者の見解や立場に対して賛同・中庸・反対・無関心など共鳴の度合いを訊きつつ、好きな歌を選歌してもらう(例えば二〇首など)。パネリストはこのアンケート結果(共鳴の度合いごとに現われる選歌傾向の違い)を考察の対象にする。傾向に違いがあるならば背景は何か、まんべんなく選ばれる歌があるならばどこに良さがあるか。
 ねらい:歌の技法だけに焦点をあてると、むしろ作者のこだわりや発信したいことを軽視してしまう恐れがある。そこで共通の基盤を得る、客観性をもたせる、作者の意図の尊重の三点を重視したい。そのためまず作者の見解を明確にする。次にあえて作者を含む関係者の立場の違いと選歌傾向を調べて客観性のあるデータに変換することで、参加者間の分断があることを共通認識として得られる。パネリストはその状況を考察することで、各人の立場を尊重しつつ考察が可能となる。

 

【参加者の感想】
・面白かったこととしては、自分の経験について発言し、皆で話し合ったことで、勉強会では新しい見方を見出すといった、今後の目的意識などを確認できたり、実際に勉強会の新しい方法を発想できたと思えることです。
・人が集まって意見交換をする場を有意義にするためには、共通の地盤から出発できるよう「場」を設計する工夫が必要だとわかった。
・勉強会の内容そのものについて話し合うことで、計画も立てやすくなって良かったのではと思います。また「こういうことがあって困った」話が「あるあるネタ」的に共有されていくのが面白かったです。

 

(記/久真八志)