Kabamy28のお知らせです。

 

【参加資格】
・会員、購読会員のどなたでも参加できます。事前連絡なしで当日飛び入りの参加も歓迎です。
・非会員で参加を希望される方は事前の連絡が必要です。

参加希望の方はkabamy@kaban-tanka.jp(Kabamy専用アドレス)までご連絡をお願いします。
終了後に二次会(喫茶店)があります。二次会に参加されない方は申し込みの際あわせてお伝えください。

 

【日時】
日時:2/12(月・祝) 14時-17時
場所:あんさんぶる荻窪 第1会議室(1階) ※最寄:JR荻窪駅
地図:http://www.city.suginami.tokyo.jp/shisetsu/katsudo/ensemble/1018713.html
会費:300円

 

【企画】
少年と庭、少女と廊下―千葉聡と佐藤弓生、比べ読み!

 

【内容】
昨年の2月に行い好評だった比べ読み企画の第2弾です。(前回は井辻朱美さんと杉崎恒夫さんでした)
今回取り上げるのは千葉聡さんと佐藤弓生さんです。異なる作風の印象があるお二人ですが、実は、他の作者はあまり使わないけれどお二人はよく使うモチーフがあります。それが「少年」「庭」「少女」「廊下」です。今回はそんな共通モチーフの歌を比較し、作品の中でどんな効果を生んでいるか、違いがあるかを検討していきます。

 

「少年」
海は海 唇嚙んでダッシュする少年がいてもいなくても海 千葉聡
老いやすき少年のごと春昼はおのずとたわむ背骨をもてり 佐藤弓生

 

「庭」
校庭に誰かが誰かを呼ぶ声があふれて春は逃げだしてった 千葉聡
体内にひろがる庭へひとつぶの葡萄の種をのみくだしおり 佐藤弓生

 

「少女」
数学を放って食堂へと急ぐ少女の肩に食いつくカバン 千葉聡
海へゆく日を待ちわびた少女期を思えば海はいまでもとおい 佐藤弓生

 

「廊下」
事務室に赤ペンをとりに行く俺と夕陽がぶつかる 渡り廊下で 千葉聡
工具箱抱いて廊下を渡るとき釘の声する星の声する 佐藤弓生

 

【進め方】
・各モチーフから連想する物事をあげてイメージマップを作ります。
・両作者の作品(複数)を受ける印象に沿って配置します。
・両作者のモチーフの扱い方の特徴をまとめます。
※詳細はKabamy23の記録をご覧ください。
http://kabamy.jugem.jp/?eid=26

 

【事前課題・準備資料について】
ありません。

 

Kabamyレポート(第二十七回)二〇一七年十二月十七日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1会議室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、飯島章友、沢茱萸、HARUKA、木村友、田中有芽子、中成 (ゲスト)高村七子

 

今回は「音」がテーマです。前半は参加者が持ち寄った「音がいい」と思う短歌を分析し、そう思わせる要素について考察します。後半は実際に「音がいい」短歌を作って歌会を行いました。

 

〈前半〉「音がいい」短歌はなぜ音がいいのか考えよう
(1)チーム分けし、話し手と聞き手と書記を決める。役割はローテーションする。話し手は「音がいい」と思うのはなぜかを話す。書記は「音がいい」を構成する要素としてあがったものを書き留める。聞き手は話し手の話を掘り下げて、要素を聞き出す
(2)書き留めた複数の要素をまとめ、音のよさを決める重要度順にランキングを作成する。
(3)各チームでランキングを発表

 

〇各参加者が持ち寄った「音がいい」と思う短歌
・HARUKA選
 こころねを ととのえてゆく ことのはの さやかゆれつつ ことたまをきく HARUKA
・高柳蕗子選
体液の虹の濃度を勝ちほこり ぼくは四郎砲声デザイナー  高柳蕗子
・沢茱萸選
 多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだかなしき  万葉集 巻14・3373 東歌 作者未詳
・飯島章友選
 ひかれあう力は痛い 翌朝のひのきのふたのほのかなしめり 東直子『春原さんのリコーダー』
・久真八志選
 口論にすっきりと勝つ空想が酢につけた蓮の根を白くする  温井ねむ
・中成選 
 君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ  北原白秋
・高村七子選
 夢を見る戦火の中をふたりして走るとなりで君が倒れる  松野志保
・木村友選
 雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ 小池光『バルサの翼』
・田中有芽子選
 ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは 在原業平・百人一首

 

《Webアンケートより》
・暴動羨しけれ わがむねに昏昏と僧帽瓣の紅き僧帽  塚本邦雄
(コメント)近代音楽的な変拍子・転調・多重的な意味・律動の戯れに圧倒された。
・氷(こほり)ゐるみるめなぎさのたぐひかはうへおく袖のしたのささ浪 藤原定家(六百番歌合)
・熟田津(にぎたづ)に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな 額田王(万葉集)
・わが胸にぶつかりざまにJe(ジュ)とないた蝉はだれかのたましいかしら 杉崎恒夫『パン屋のパンセ』
・喜悦したきんきん声で麒麟までも跪拝し曰く「君が嫌いだ」 高柳蕗子『あたしごっこ』
・白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう  斎藤史
・けふもまた冷たいドアを鎖すとき鉄より鉄をぬきさりし音 木下こう『体温と雨』

 

〇チームごとにランキング発表
・HARUKA、中チーム
1.同じ母音、子音の多用
2.単調ではないアクセントがある
3.柔らかい言葉が多い
4.オノマトペ
5.連続的な音が多い 

 

・高柳、飯島、木村チーム
1.五十音の行ごとの特徴を生かす
2.ありがちなメロディーからの脱却
3.間を生かす

 

・久真、沢、田中チーム
1.口をあまり動かさない(母音の連続、くちびるがくっつかない)
2.着地点がそろう(同じ子音が同じ位置)
3.音と調和したモチーフ
4.子音は互い違いで母音は連続
5.流れるような感じ(変化があって元に戻る)

 

〈後半〉「音がいい」短歌を作ってみよう歌会
(1)「野菜の名前」だけを使って短歌を作る。助詞や助動詞を一切使わないこと。同じ単語は二回まで使用可。
(2)一人二点持ち、無記名にて投票

 

〇結果
()内は得点、※は他の参加者からのコメント

・高柳蕗子
(2)トマトミニトマト唐がらしぴいまん 水菜みぶなめキャベツわさび菜
※破調かと思いきや五七五七七は守っている。「唐がら・しぴいまん」となるのが面白い。


・中成
(0)サツマイモトマトアボカドトウモロコシシメジブロッコリーズッキーニ
※「シメジブロッコ」からの下句のリズムがいいが、三句目「トウモロコシ」が字余りのわりに効いていない。s音も言いにくさがある。


・田中有芽子
(3)コールラビルッコラケールズッキーニペピーノフルーツトマトゴマウド
※長音と促音の多用で弛緩と緊張が繰り返されリズムが良い。最後のゴマウドは賛否両論。


・HARUKA
(4)ねぎわけぎあおねぎこねぎくじょうねぎねぶかしもにたねぎふかやねぎ
※下句のノリがよく、音がきれい。「ねぎ」で口を閉じるが、「か」「た」「かや」でア音がくるので花が開くような爽快感がある。


・高村七子
(3)セリセロリパセリシロウリブロッコリ キュウリニガウリマクワウリセリ
※濁音と半濁音が効果的。五七五七七にはまっていてきれい。もうすこし崩しも必要では?


・久真八志
(1)ゴママッシュルームタロイモサツマイモ サトイモソラマメタカナナタマメ
※「ゴママッシュ」が面白い。下句のまとまりがいい。m音は言いにくい。


・飯島章友
(2)アカカブライチゴダイコンウドスズナエリンギユリネオクラレンコン
※「イチゴダイコン」は「いちご大福」、「ウドスズナ」は「ウド鈴木」など既存の単語に似た響きでつなげたところにしっくり来る感じが強い。アイウエオで折句をしている。


・木村友
(1)トマトカブ春菊しめじキュウリウリケール松茸なすさつまいも
※下句のリズムがきれいに感じる。「まつ」「なす」「さつ」で畳みかけるように韻を踏んでいる。


・沢茱萸
(2)パセリセリパクチーちぢみホウレンソウアーティチョークズッキーニアズキ
※「アーティチョークズ・ッキーニアズキ」という下句の展開が気持ちよくないリズムだが、不思議に印象的である。

 

〈会場意見〉
・これまでは音のいい短歌についてリフレインなどに着目しているだけだったが視野が広がった。
・音に着目して読むのは初めてなのでどうコメントしてよいかわからなかった。
・珍しい企画。ここまで徹底して音にこだわる機会はない。
・似たような仕上がりの短歌が出てくると思っていたが、いずれも個性的だった。
・きれいにまとめるより、自然なリズムで面白いと感じる部分がある方が印象に残りやすいのではと思った。
・メロディー(音の高い低いのつらなり)という視点が発見だった。


(記/久真八志)
 

Kabamyレポート(第二十六回)二〇一七年十月八日(日)
 於あんさんぶる荻窪(第1教室)
 

【参加者】高柳蕗子、久真八志、飯島章友、山下一路、法橋ひらく、こずえユノ、藤島優実、沢茱萸、前田宏
 
 今回のKabamyは「このゆびとまれ!スーパーアメフラシ!」です。山下一路さんの歌集「スーパーアメフラシ」を取り上げます。また2月のKabamyで開発した「このゆびとまれ!」という方式を採用しました。


※配布資料は左記のリンクまたはKabamyブログにて公開しています、
https://drive.google.com/open?id=1DPykN0Z23Q1fqL0-tq0TZ9q5Wi3cEAtN

 

〈進め方〉
・事前に公開でWebアンケートを実施する。
回答者は「スーパーアメフラシ」の抜粋三〇首のうち良いと思う五首を選ぶ。
また山下一路さんへのインタビューに対して「同感するか」を回答する。
・結果から、インタビューへの同感の度合いによって選歌傾向に偏りのある歌をピックアップし、理由を参加者が考察する。

 

〈アンケート結果の概要〉
インタビュー1
聞き手:市民運動に参加されているそうですが、どのような主張をお持ちですか?
山下:非戦、護憲(九条の非戦条項)は絶対だと思っています。


・「全く同感する」回答者の選が多かった歌
たんぽぽのぽぽひとつひとつに分散しぽぽそれぞれが春の軍隊 【P145】
あやまちのすべてを鳥のせいにして皆殺しにする飼育係は 【P13】
ボツボツの黄色い線のうえを歩きつづけて世界の外側にでて行く 【P125】
特快はもうありません酸素ボンベわすれた人は帰ってください 【P138】


・「あまり同感しない」「全く同感しない」回答者の選が多かった歌
すれすれな家族のあいだを削りつつ歯間ブラシがすりぬけてゆく 【P55】


インタビュー2
聞き手:運動に参加しているのはなぜですか?
山下:声をあげないでいると現政権の憲法改悪、戦争のできる国の方向を認めているように思われると嫌なので、機会を作って行動参加している。


・全く同感
この子がおまえの子だと先生に言われ教室の端に立つ参観日 【P148】
ボツボツの黄色い線のうえを歩きつづけて世界の外側にでて行く 【P125】
特快はもうありません酸素ボンベわすれた人は帰ってください 【P138】


・同感なし
かたわらに折り畳み式一生があり展がるたびに水がこぼれる 【P29】
二駅目で座れたのに目のまえにおばさんが立つ。死ねとばかりに 【P129】
回転をする世界ハマチ・ツブ貝・アボカド・イクラ戦争 【P70】

 

インタビュー3
聞き手:市民運動に参加しているけれど選挙運動はあまりお好きでないとうかがいましたが?
山下:あくまで一市民として、主張の合う運動に参加しています。昔から党派性が嫌いです。なぜなら、啓蒙的だから。ここでいう啓蒙とは「党が蒙昧な大衆を指導して階級闘争に勝利する」みたいな、旧いイメージです。市民運動が選挙活動に集約されてしまうのは、政党政治に主要部分を委ねることになってしまうので好ましくないのですが、今の時代に他に良い方法もないので「しょうがないか」と思っています。


・全く同感
押入れにかくれているの 母さんはごそごそさせてやがてカナブン 【P23】
残飯はルワンダほどにあるけれどホントに欲しいコンビニがない 【P102】


・同感なし
ゆずれない一線ひいてみろと少年にスゴまれている小さな砂場 【P64】
二駅目で座れたのに目のまえにおばさんが立つ。死ねとばかりに 【P129】

 

インタビュー4
聞き手:市民運動と作歌はつながっていますか?
山下:(験悗濃彖曚糧揚を目指すみたいなものとは距離を置いています。短歌を作るのは、世界とつながっていたいから。世界というのは社会とか他者とも言い換えられて、それらと自分との関係性を相対化しようとしています。現実の社会を土台にして生活していて、そこでの生きづらさや違和感を、自己の表出として作品に反映しています。
∋毀臼親阿呂海譴蕕隆蕎陲鮴治過程で現実化したいという自己の指示性としての欲求と考えています。


・全く同感
この子がおまえの子だと先生に言われ教室の端に立つ参観日 【P148】
順番に十階のフェンスを越えて子供が落ちる 飛べないのだ 【P113】


・同感なし
たんぽぽのぽぽひとつひとつに分散しぽぽそれぞれが春の軍隊 【P145】
ゆずれない一線ひいてみろと少年にスゴまれている小さな砂場 【P64】

 

〈参加者の考察〉
〇前田宏
「たんぽぽの〜」に、インタビュー1で同感する回答者の選が多かった理由は、「軍隊」という言葉の持つ猛々しさや恐ろしさを無化していることによって戦争に反対する層から支持を得やすかったためではないか。逆にインタビュー4で同感なしとした回答者の選が多かった理由は、「作歌が現実を反映させる必要はない」という価値観のもと、たんぽぽと軍隊の結びつきに詩を感じた層からの支持ではないか。


〇山下一路
「ボツボツの〜」に、インタビュー2で同感する回答者が多かったのは、歌意が日常行動からとらえやすい点によるのではないか。選をした回答者は、作者像と歌の主体をほぼ同じと捉えて理解しているためではないか。


〇沢茱萸
「この子が〜」に、インタビュー4で同感する回答者の選が多かった理由は、「文学において思想の発揚を目指していない」という見解への共感が回答者にあるからではないか。あまり社会的な立場から歌を読まない(詠まない)スタンスや、学校という場面設定のなじみやすさから票を入れたのではないか。

 

〇久真八志
「順番に〜」に、インタビュー4で同感する回答者の選が多かった理由は、「現実の社会を土台にしている」ことや「生きづらさや違和感」への共感がある層の支持ではないか。歌に生きづらさや社会への違和感が強いため。

 

〇高柳蕗子
「あやまち〜」に、インタビュー1で同感する回答者の選が多い理由は、勧善懲悪的な構図での解釈が成り立ちやすいからではないか。一部のリベラル派には、はっきりとした善悪で世の中を捉えるきらいがあるように思う。

 

〇藤島優実
「かたわらに〜」に、インタビュー2で同感しない回答者の選が多い理由は、自分が行動しても世界はあまり変わらないという、やや自己批判を含んだ気持ちがある回答者からの支持ではないか。「ひろがる」「ころがる」など自動詞の目立つこの歌には、現状をどうしようもできないという諦めも感じられる。

 

〇こずえユノ
「特快は〜」に、インタビュー2でやや同感する回答者の選が多い理由は、市民運動に参加するような、格差社会への疑問を大きく持っている層が支持しているからではないか。酸素ボンベの有り無しや都会など、特別な階級の人の特権を感じさせる歌であるため。

 

〇飯島章友
「かたわらに〜」に、インタビュー2で同感しない回答者の選が多い理由は、理念よりも現在の状況に応じて対応を考えるタイプの支持が集まったからではないか。「一生」や「水がこぼれる」という現実性に感応したのかも。

 

〇法橋ひらく
「二駅目で〜」に、インタビュー2と3に同感しない回答者の選が多い理由は、無力感や若干の被害者意識などに共感する人に支持が多かったからではないか。社会的な善とされる規範を守りたい、正しくありたいという気持ちがあり、それによって自分のしたいことが実行できない屈託があるのではないか。

 

〈参加者から〉
・事前アンケート結果の傾向から『スーパーアメフラシ』にアプローチしてみるという試みは新鮮でした。アンケートの回答者が一〇〇人くらいいればもっとはっきり見えてくるものがあったかもしれません。
・政治や宗教や社会問題の話はシャレにならないことが多く、ふだんは腹を割って話すことができませんが、今回のように、取り上げる歌集に関連づけて歌人たちの政治的・社会的傾向に踏み込めたことは、大変意義があったと思います。またそのアンケートのためにごじぶんの歌群を叩き台として提供されたばかりでなく、ごじぶんの政治的意見を事前に表明された山下一路さんは本当に凄い人だと思います。
・今回の試みで、相関を見いだすのはすごく難しい、とわかった。(中略)私という読者がたまたま作者の信念をひとつキャッチして、共感したとか、反感を持った、というようなことは、意味の薄い論点だ、とわかった。
(記/久真八志)